「本職? 人間だ。」と答えた男、岡本太郎の最大規模回顧展がやってくる。

2018年に塔内改修が完了した《太陽の塔》や、渋谷駅構内に移設された巨大壁画《明日の神話》などを通じ、没後26年経ってもなお若い世代に支持される芸術家、岡本太郎。「芸術は爆発だ」などの発言や奇天烈な言動ばかりにスポットが当てられがちだが、その初期から晩年までの作品を網羅した、没後最大規模となる回顧展が開催される。
岡本太郎は1929年、18歳の時に家族と共にヨーロッパに赴き、その後単身でパリへ渡り芸術家を目指す。前衛芸術や新しい思想に触れながら、哲学や社会学、民族学を学んだ。その経験が、のちに縄文土器をはじめとする日本文化の再発見と探求、各地の奇祭や呪術に関するフィールドワークにつながり、自らの作品にも影響を及ぼした。
約10年間のパリ滞在を経て、第二次世界大戦勃発を機に帰国。1940~50年代は戦後アヴァンギャルド画家の旗手として活躍した。そして1951年、縄文土器と出会い大きな刺激を受け、民族学的な視座から岡本の活動の幅が広がっていく。
岡本を魅了した呪術的な世界は、後の《太陽の塔》制作へとつながっていく。一方で、「芸術とは生活そのもの」「芸術は大衆のものだ」との信念から、表現活動は野外へと飛び出し、屋外彫刻やパブリックアート、生活用品にまで広がっていく。
晩年になってもなお絵画への情熱は衰えず、精力的に制作し続けた。岡本太郎の生涯を通観すると、表現活動が多岐にわたっていることに気づかされる。「絵画」「彫刻」という小さな枠にとらわれることなく、「人間―全存在として猛烈に生きる人間」として、森羅万象の表現に果敢に挑戦した人生を深く理解できる展覧会だ。