「整う」にはほど遠い、対局前日[山口恵梨子の将棋がちょっと面白くなる話]
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今回のテーマは、対局前日の過ごし方にしようと思います。棋士、女流棋士にとって、対局はスポーツ選手の試合に匹敵するものです。対局で負けると、その棋戦の次の対局がなくなってしまうので、仕事がどんどんなくなり、暇になっていくというイメージでしょうか。勝ち負けがそのままお給料に直結するので、負けが続くと、減っていく預金通帳の残高を眺めながら節約生活に入ったりします(笑)。「それなら空いた時間で、普及の仕事をすればいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、普及の仕事の謝金も、強さの目安である段級位によって変わってきます。シビアな世界です。
というわけで、生活が懸かっている対局なのですが、万全の状態で挑むには前日の過ごし方が結構、大事だったりします。棋士の先生方のお話を聞いていると、最近は対局前日にお気に入りのサウナに行って汗を流す人が増えているそうです。2日前までに対戦相手の研究は済ませておいて、前日はしっかり睡眠をとれるようにリラックスする……。なるほど。心も体も整える! いい過ごし方ですね!
私は、と言いますと、同じような境地になりたいところなのですが、序盤の知識が足りなさ過ぎて、2日前までに対戦相手の研究が終わりません。前日まで少しでも知識を頭に詰め込むため、根を詰めて研究することが多いです。で、当日は「できる限りの研究はしたぞ!」と、気持ちをのせて駒を進め、対戦相手に研究範囲から外れた手を指されて崩れ落ちる、というのが最近のパターン。向かい飛車も得意戦法だって聞いてないよ! 中村桃子さん……。対局の度に、ライバルたちの強さや地道な努力を痛感させられ、心洗われている今日この頃です。