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山内省二の一筆両断 中間団体とは 「教育正常化」の立場から意見・要望提言
2022-10-29
山内省二の一筆両断 中間団体とは 「教育正常化」の立場から意見・要望提言

民俗学者の宮本常一は昭和25年と27年の2回、調査のために対馬に渡りました。村の古文書の貸与を頼むと、「寄りあいにかけて皆の意見をきかなければいけない」と区長が持ち出し、協議の末、許可を得るのに丸一日かかったそうです(『忘れられた日本人』)。何とも悠長な話です。宮本がこの逸話を記したのは、「昔のしきたりを語りあうということがどういう意味をもっていたかということを具体的に知っていただきたいため」でした。

宮本は同56年、74歳で亡くなりました。西暦にして1981年。死の前年には、郷里山口県大島郡に郷土大学を作り、中国地方を歩き、新たな執筆準備をしていた在野の民俗学者が、臨終の床で40年後の令和の激変した社会を思い描くのは困難だったでしょう。

平成以降、時間推移は早まる一方です。姿の見えない力が忍び寄り、個々人の生活が予測不能な事態に追い詰められている現代、「中間団体」の存在意義が問われています。「中間団体」とは、

①憩いであり活力の源になる場

②共に助け合う場

③意見・要望を提言できる場

で成り立つ顔の見える組織と考えています。国家では大き過ぎ。家族では小さ過ぎ。家を一歩出ると、普通の個人の生活圏は職場か学校です。子供たちは学校でクラスや部活動といった何らかの中間団体に所属し、在籍校も卒業後、同窓会という中間団体になります。

教員も学年や分掌や教科や部活といった中間団体に属し、勤務校も中間団体といえます。そこは

①憩いであり活力の源になる場

②共に助け合う場

であり、個人的な濃淡の差はあれ、そこに愛着が生まれます。ところがこれだけでは

③意見・要望を提言できる場

が抜け落ちています。

社会の変化に対応できる基礎知識を教え、これからの世界を担う人材を育成するために教育は欠かせません。すると、投票率が低いから主権者教育をやれ、税金を納めないから子供たちに税の作文を書かせろ、日本人は金銭感覚に疎いから金融教育をやれ、スマホを巡るトラブルが絶えないからマナー講座を開け…次々に学校への丸投げが始まります。

学校という箱の中を覗(のぞ)けば、ご立派な正論を並べた教育施策が各所から投げ込まれ、あふれかえっています。一つ一つは正論です。しかし、すべてを受け入れるのは学校の容量を超えています。

さまざまな教育諮問機関に、民間企業の立場から正論が述べられます。傾聴に値する一方、同じ「経営」でも「公立学校経営」特有の観点が抜け落ちていると感じるときがあります。

公立学校の経営者は教職員の人事・給与に関して決定権を持っていません。また企業なら整理すれば済む不採算部門を、いつまでも抱え込むのが学校経営です。○○部に実績がないから廃部、停学者を出たからそのクラスは廃止といった具合に、リストラや清算手段を使えません。不採算部門を丸抱えしたまま進めていくのが学校経営です。

教員レベルでも、学業成績や部活の指導に貢献したからといって給料に跳ね返るわけではなく、逆に何ら成果をあげなくても、生計に支障をきたしません。だからこそ一人一人の意識の中に教師としての「使命感」がなければ、学校経営は成り立たないのです。「師道を興さんとならば、妄りに人の師となるべからず、又妄りに人を師とすべからず。必ず真に教ふべきことありて師となり、真に学ぶべきことありて師とすべし」という吉田松陰の言葉が真理として響いてくるゆえんです。

こうした現状認識のもとで、「意見・要望」を教育行政を始めとする関係機関に提言する場がないと、職員室内に不平不満や愚痴が生じても、勤務環境の改善どころが、悪い空気が滞留して、更なる環境の悪化や機能不全を招きかねません。

宮本は「領主―藩士―百姓という系列の中へおかれると、百姓の身分は低いものになるが、村落共同体の一員ということになると発言は互角であった」と述べ、対馬では「村の伝承に支えられながら自治が成り立っていた」と伝えています。つまり③があって共同体の自治が成り立つのです。

ただそうなると日教組のような偏向団体も中間団体に該当します。①~③だけなら医師会も民医連も同じくくりです。自治労も日弁連も今問題になっている旧統一教会も中間団体です。左翼系団体や怪しげな宗教団体と同じ扱いを不快に思われる方もいると思いますが、①~③までなら同じ範疇(はんちゅう)です。よって

④理念共有の場

が今後の方向性を決めます。

昭和43年のエンプラ事件(原子力空母エンタープライズの米軍佐世保基地寄港に対する全学連などの暴動)の際、デモに参加した福岡のある公立高校の生徒が警察に逮捕・拘置されました。息子の将来を悲観した母親が灯油をかぶって焼身自殺。その話を伝え聞いた息子は、「無知な女の哀れな末路ですね」と言って平然と横を向いていたそうです。

この出来事を契機に私たちの初代委員長・永田茂樹は「教育正常化」の理念を掲げ、新高教組(福岡教育連盟)の活動に精魂を傾けていきました。私たちは①~④の要素を持つ健全な中間団体、保守系教職員団体として、今年度創立50周年を迎えます。

◇

【プロフィル】山内省二(やまうち・しょうじ) 福岡教育連盟執行委員長。昭和42年、北九州市門司区生まれ。60年、福岡県立小倉高校、平成3年、広島大学文学部卒。読売新聞西部本社記者を経て5年、福岡県立直方高校教諭に。県立鞍手高校教諭、県教育センターの長期派遣研修員を務め、21年から県立嘉穗高校教諭。令和2年から現職。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/fe142827ef34a85b94635c0e2f8030db8416ee59

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