京都の歴史的建造物でブライアン・イーノの空間に浸る。

ミュージシャンであり、アーティストであるブライアン・イーノはイギリスの地方都市、サフォークの出身。アートを学び、電球やテレビのモニタなどを使ったアート作品を制作していた。その一方でデヴィッド・ボウイやU2のプロデュースを手がけ、自らもソロやロバート・フリップとのコラボレーションでアルバムを発表。集中して聞くことも、聴き流すこともできる「アンビエント・ミュージック」の創始者としても知られている。
京都で開かれているイーノの個展『BRIAN ENO AMBIENT KYOTO』では5つのインスタレーションを体験できる。そのうちの一つ、《77 Million Paintings》は2006年に日本で初めて発表され、その後アップデートを繰り返しながら世界を巡回して大きな話題を集めた。今回は16年ぶりに日本で鑑賞できる機会になる。これは複数のモニターを組み合わせた画面に7700万の絵画が現れるというものなのだが、モニタ上のグラフィックはゆっくりと変化しており、いつ、どこが変化したのかが容易にはわからない。集中して見ていても気づかないうちについ先ほどとは全く違う絵柄となっていて驚かされることもよくある。人間の視覚と認識の間隙をつくような作品だ。会場では複数のソファが置かれ、ゆったりと寛ぎながら鑑賞することができる。
《Light Boxes》はLEDによって色面が光る作品。こちらもゆっくりと色が変化していくのだが、ある面の色が変わると隣り合う別の面の色も変化するように感じられる。今見ている色や光が物理的に存在しているものなのか、私たちの脳が別のものにつられて実際とは違う色合いや強さの光として認識しているのかが曖昧になってくる。
《Face to Face》は世界初公開となる作品。3つのモニタの1面にひとりずつ、顔が映し出されている。モデルは実在の21人の人々だ。特殊なソフトウェアにより、ひとりの顔から別の人の顔へとピクセル単位でゆっくりと変化していく。その途中で実際に撮影されたのではない人の顔が現れる。モニターに表示される人の顔は36000人以上にもなるのだという。私たちは鏡を見て、自分の顔はいつも同じだと思っている。でも久しぶりに会う人なら年月によって変化したことがわかるだろう。