建築家・永山祐子が体現する開かれた建築家像とは?

新年が明けて早々に、翌週からドバイへ旅立つという建築家・永山祐子に会いに自宅を訪れた。ドバイへの旅の目的は、デザインを手がけたドバイ国際博覧会の日本館視察とレクチャーだという。永山の自宅は中央線沿線の駅近くにある。駅前の繁華街を抜け、静かな道に入ると、突きあたりに少し背の高いマンションが見えてくる。その最上階からは周囲の景色が見渡せそうで、この建物だろうと直感的に思った。永山は築50年近いマンションの最上階をリノベーションし、アーティストの夫と2 人の子どもとともに暮らしている。
玄関チャイムを鳴らすと、黒いセーターに鮮やかな色のラインが入ったロングスカートを合わせた永山が現れた。隣駅の住宅の現場を見てきたところだという。
「小学校の同級生の家を設計したのですが、その鉄骨の建て方をチェックしてきました」
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1970年代に建てられたマンションのメゾネットをリノベーションした永山の自邸。下のフロアを仕事場に、上のフロアは細かい仕切りを取り払い、広々とした家族4人の居住スペースにしている。壁にかかるアート作品は夫である藤元明によるもの
万博のパビリオンに、来春開業となる新宿歌舞伎町の超高層ビル〈東急歌舞伎町タワー〉、そして2027年度完成予定の東京駅前の常盤橋に建つ日本一高いビル〈Torch Tower〉と大規模プロジェクトが続く建築家が、個人住宅の現場にも足繁く通っていることに少し驚いた。
「小さな家も街並みの一部になってゆくことには変わりがないので、それをデザインする責任があります。建築的な行為というのは、都市をつくる責任を担うことだと強く感じるんです」
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新宿・歌舞伎町のミラノ座跡地に建設中の〈東急歌舞伎町タワー〉。約225mとなる超高層ビルのコンセプトおよび外装デザインを手がけた。歌舞伎町は昔沼地で、そこを民間の力で開発し戦後復興を成し遂げたという歴史から、そのエネルギーを地中から湧き上がる「噴水」として表現した。