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中米で見つけた「珈琲の宇宙」。至高の一杯を追う焙煎士が開いた理想のカフェ
2022-05-06
中米で見つけた「珈琲の宇宙」。至高の一杯を追う焙煎士が開いた理想のカフェ

その店は、緑豊かな世田谷区駒沢公園からほど近い、数多の著名アスリートを輩出している日本体育大学のそばにある。東京とはいえ、この辺りは閑静な住宅街で、都心のピンと張り詰めた空気とはうってかわり、緩やかな時間が流れている。

筆者がこの珈琲豆専門店を初めて訪れたのは10年以上も前のこと。その場で試飲させてもらったグァテマラ産珈琲の味がいまだに忘れられない。

黒蜜のようなトロリとした舌触りと奥行きのあるコク。爽やかな酸味が舌の上でしばし軽やかに躍り、華やかな香りをまとって鼻から抜けていく。こんなに濃厚で香り豊かな珈琲があるのかと驚いた。

深い吐息とともに「美味しいですね」と声をかけると、焙煎士も兼ねる店主の栢沼(かやぬま)良行は照れ臭そうな笑みを浮かべ、「うちは中米産に力を入れているんです」と教えてくれた。

■まるで「パラサイト 半地下の家族」のように

1974年生まれの栢沼良行は、中学生のとき、受験勉強の際に眠気覚ましのためにと、インスタント珈琲を飲むようになった。ある日、祖父から応援も込めて「せっかくなら本物を飲めよ」とコーヒーメーカーをプレゼントされる。後にそれが、栢沼の人生を左右するほど珈琲にのめり込むきっかけとなるのだから人生とは不思議なものだ。

晴れて高校に入学すると、すっかり珈琲好きになっていた栢沼は、毎朝ハンドミルで豆を挽き、自らドリップをするようになった。朝、淹れたてを飲んで、残ったぶんは水筒に入れて学校に持っていった。

こうして珈琲を愛飲するようになった栢沼だったが、ひとつ気になることがあった。珈琲には「コロンビア」「ブラジル」「モカ」「キリマンジャロ」といった銘柄による「風味の個性」があるはずだが、専門書で解説されているようには感じられない。本当に銘柄による味の違いというものは存在するのだろうか。それをいつしか自分の味覚で確かめてみたいと思うようになっていた。

大学生活でも変わらず珈琲が傍にある生活が続き、1998年に大学卒業と同時にカフェ文化の盛んなヨーロッパに単身で渡った。スウェーデン、フランス、イギリス、オーストリア、チェコ……と半年かけて、各国のカフェに毎日のように足を運び、珈琲を飲み比べた。しかし、それでも「銘柄による風味の違い」というものは明確にはわからなかった。

心残りのうちに帰国した栢沼だったが、まずは食い扶持を稼がなければならない。当然のように、珈琲に関連する会社に絞って就職先を探した。しかし新卒優遇が現在よりも格段に強かった当時、就職戦線に半年も出遅れた人間はどこの会社も門前払いだった。

最終的には「ドリンクバーにはコーヒーポットがあるから」という半ば冗談のような理由で自分を納得させ、大手のファミレスチェーンへと就職することになる。

栢沼が就活をしていた1998年頃は、スターバックスコーヒージャパンが「新宿サザンテラス店」や西日本1号店となる「梅田HEP FIVE店」をオープンするなど、「セカンドウェーブ」と呼ばれるシアトル系のカフェが日本を席巻しつつあった。栢沼も就職先の候補としていちおうは検討したとはいうが、どうも自分が進むべき方向とは違うと感じたという。

2年ほどファミレスに勤務して、店長候補として多忙を極め昼夜問わず働くようになると、しだいに珈琲のことなど忘れてしまう日も増えていき、自分は本当にこのままでよいのだろうかと自問するようになる。そしてファミレスを辞め、小田原の喫茶店でアルバイトをするが東京で何か足掛かりを掴もうとそれも辞め、武蔵小金井にアパートを借りて、珈琲関連のセミナーに通う日々を送るようになった。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/adc3b840d164b93e8b92a898d0263d4c9149555a

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