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「出版不況って言うのやめよう」社員6人、地方から重版出来なぜ?
2023-03-05
「出版不況って言うのやめよう」社員6人、地方から重版出来なぜ?

 社員はわずか6人。地方の小さな出版社が次々とベストセラーを生んでいる。業界平均で1~2割とされる重版率は7割近く。「活字離れ」と言われて久しいが、アイデア次第で本が売れることを示し、「もう出版不況って言うのをやめよう」と業界にも提案している。書店で思わず手に取りたくなる本作りの秘密を追った。

 兵庫県明石市の「ライツ社」が設立されたのは2016年。「自分の思うような本作りがしたい」と京都市内の出版社にいた4人が独立した。社長で編集長の大塚啓志郎さん(36)は明石市出身。祖父が所有する古いビルの1階を借りて拠点にした。

 大手取次会社と契約したが、本が売れても半年間は入金がない。運転資金3000万円を借金しての船出だった。

 ◇「見たこともない本を」

 当初は売れ筋を狙ってビジネス書などを出版したが、結果は約2000万円の赤字。「自分たちの力不足でどこかで見たような本になってしまった」。倒産を覚悟し、「これまでに見たこともない本を出そう」と開き直った。

 その1冊が、世界の少数民族を撮影した写真家、ヨシダナギさんの写真集「HEROES」。少数民族を「保護される存在」ではなく、美しく誇り高いヒーローと捉えた独自の世界観が評判になった。18年に出版し、1万2000円超の高価本ながら約9500部を売り上げた。

 同社には、通常の出版社でやるような企画会議がない。営業担当を含め、社員全員がアイデアを思いつくと通信アプリ「LINE(ライン)」に投稿する。返事のない「既読スルー」ならボツ、反応が良ければすぐに動く。「自分たちが本当に面白いと思う本以外は作らない」というこだわりだ。

 「リュウジ式悪魔のレシピ」(19年)は「一口で人をとりこにしてしまう最高の料理の作り方」を紹介する本。先にタイトルが決まった。著者を探した時、「この人しかいない」と目に留まったのがツイッターでレシピを投稿していた料理研究家、リュウジさん。発行部数は22万部に達し、リュウジさんは料理系ユーチューバーとしても人気に火がついた。

 認知症の人から見る日常世界を旅行ガイドのように紹介した「認知症世界の歩き方」(21年)は「医師や家族が書いた認知症の本はあるが、当事者の声がない」との発想から生まれた。認知機能とデザインの関係を研究していたデザイナー、筧(かけい)裕介さんに書籍化を提案。17万部を売り上げ、NHKの番組にもなった。

 ◇1冊に時間をかける

 快進撃を続ける同社だが、意外にも22年までの6年間で出版したのは36冊だけだという。そのうち24冊がヒットの基準とされる重版を達成。全国では年間約7万冊の新刊が生まれ、「数撃てば当たる」と次々に新刊を出す出版社もあるが、同社の戦略は逆だ。一つの作品にプロモーションや営業の時間をかけることで、書店で目立つ場所に置いてもらえる確率が高くなるという。

 出版社の8割以上は首都圏に集まるといわれるが、大塚さんは地理的なハンディキャップを感じたことがない。「東京の有名作家さんに執筆のお願いに行く時、『明石から行きます』と言えば、『わざわざ遠くから』と会ってもらえたりする。関西の書店は地元を応援してくれる雰囲気がある」と話す。

 新たなジャンルにも挑戦している。絵本や児童書の編集経験がある感応(かんおう)嘉奈子さん(45)を20年に採用。22年には同社で初めての絵本「おたんじょうび ふ~」(作・たなかしん)を世に出した。

 絵本は歴史のある出版社が多く、50年前の名作が今も売れ続ける。新規参入のハードルは高かったが、出版後は子どもの感想ハガキが次々に寄せられ、大きな手応えを感じた。「まだ力不足だが、絵本や児童書で実績を積み重ね、いつか小説も出したい」と意気込む。

 最近では、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で紹介された本がベストセラーになるケースも出ている。大塚さんは「活字離れではなく、若い人たちに読みたくなるような情報が届いていなかっただけ。潜在的な読者に作品の魅力を届ける工夫や努力をすれば、本はこれからも売れる」。小さな出版社の挑戦は続く。【山本真也】

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/76083f7c15fddf721b8e0b8a82fec2f2ce126faa

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