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【新刊紹介】構成の巧みに驚かされる小説:松波太郎著『カルチャーセンター』
2022-07-26
【新刊紹介】構成の巧みに驚かされる小説:松波太郎著『カルチャーセンター』

斉藤 勝久
小説などの中に登場する別の作品を「作中作」という。本作の後半には、親友が書いたという長い作中作と、小説家ら16人のコメントが続き、その凝った構成で一つのまとまった作品となっている。
著者は2008年に文學界新人賞を受賞し、芥川賞の候補にこれまで3回選ばれた40歳の小説家である。

本書の前半は、題名通りの都内にあるカルチャースクールの文芸創作講座を巡る話だ。大学の先生が講師となり、作家を目指す受講者が目立つクラスで、19歳と最年少の受講生ニシハラ君が書いた作品『万華鏡』について感想を述べ合っているところから始まる。

主人公はニシハラ君と仲のいい、26歳の大学院生マツナミ。著者と同名だから、モデルは著者本人だろう。二人はお互いの作品を読み合い、マツナミの家で感想を伝え合うこともあった。

講座の中から、受賞してデビューするメンバーが出てくる。主人公も小説で新人賞を受賞して作家デビューを果たした。講座は講師の都合で閉講となるが、二人の仲は続き、ニシハラ君の『万華鏡』について何度も話し合う。しかし、主人公は突然、ニシハラ君が「みずからお亡くなりになった」という連絡を受け取った。
後半の作中作こそ、ニシハラ君が残した『万華鏡』である。83ページの長い作品が全文載っている。ニシハラ君が心を寄せていたと思われる女性を主人公にして、正当防衛が問題の殺人事件などが展開されていく。カルチャースクールとは全く関係のないストーリーだ。

本書全体の構成が面白いのは、作中作『万華鏡』の後に、文学の新人賞を受賞した小説家や、講座関係者ら16人の本作、作中作の両作品に関するコメント、感想が述べられている点にもある。これを読んでいると、舞台の講座が「半分は文学を本気で志すダメ人間色・人間失格色の強い若者、残りが奥様や紳士などカルチャースクールに通い慣れた大人たちだった」ことなど、クラスの様子がよく分かってくる。

作中作は全文がニシハラ君のものなのか、著者がどの程度まで筆を加えているのか分からないが、著者は、書くことに心血を注いでいた友人の未発表作を世に出した。かつてカルチャーセンターで机を並べた親友への鎮魂の思いが伝わってくる。
斉藤 勝久
ジャーナリスト。1951年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。読売新聞社の社会部で司法を担当したほか、86年から89年まで宮内庁担当として「昭和の最後の日」や平成への代替わりを取材。医療部にも在籍。2016年夏からフリーに。ニッポンドットコムで18年5月から「スパイ・ゾルゲ」の連載6回。同年9月から皇室の「2回のお代替わりを見つめて」を長期連載。主に近現代史の取材・執筆を続けている。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/0ddc31f180abf16e39825fd67c6166b556455c16

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