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柴田敏雄と鈴木理策がとらえた「絵画」とは。アーティゾン美術館に見る絵画と現代写真のジャムセッション
2022-04-28
柴田敏雄と鈴木理策がとらえた「絵画」とは。アーティゾン美術館に見る絵画と現代写真のジャムセッション

 石橋財団コレクションと現代美術家が共演する、アーティゾン美術館の展覧会「ジャム・セッション」。その第3弾となる「写真と絵画-セザンヌより
柴田敏雄と鈴木理策」が4月29日に開幕した。


 印象派をひとつの起点とした絵画の変革に、写真という19世紀の発明は少なからず影響していた。本展は、こうした絵画と写真の相互的な関わりに立脚し、ポール・セザンヌの作品に関心を寄せ続けているふたりの現代写真家、柴田敏雄と鈴木理策を招致。ふたりの作品と同館のコレクションを使いながら、写真と絵画の関係を問う展覧会だ。


 本展は6つのセクションで構成される。セクションⅠは「柴田敏雄──サンプリシテとアブストラクション」だ。


 柴田は1949年東京生まれ。東京芸術大学大学院油画専攻修了後、ベルギーのゲント市王立アカデミー写真科に入り写真を本格的に開始。日本各地のダムやコンクリート壁などの構造物のある風景を撮影してきた。


 このセクションの冒頭、隣り合うかたちで展示されているのは、コンクリートの壁面を流れ落ちる水をとらえた柴田の写真《山形県尾花沢市》(2018)と、パステルによって大胆に日の出の海を描いた藤島武二の絵画《日の出》だ。双方ともにメディアも制作年も大きく異なるが、実在の風景を作家の視点によって抽象化しているという点では共通性を見いだせる。「サンプリシティ(単純化)」を何より重視したという藤島の絵画と柴田の写真は、本展のテーマである写真と絵画の関係を探るうえでも最適な導入といえるだろう。


 ほかにもこのセクションでは、アンリ・マティス《コリウール》(1905)やピート・モンドリアン《砂丘》(1909)などが、石橋財団コレクションから展示。感覚的に配置された色彩や、強調されたコントラストなどが特徴的なこれらの絵画が柴田の写真と並べられている。人工物をレンズを通して写し取ることで被写体の具象から遠く離れた構成を生み出してきた柴田の写真のねらいも、両者を比較することでより明瞭になるだろう。


 セクションⅡ「鈴木理策──見ることの現在/生まれ続ける世界」では、鈴木理策のモネやセザンヌに対する興味から、展示が広がっていく。


 鈴木は1963年和歌山県新宮市生まれ。東京綜合写真専門学校研究科卒業。地理的移動と時間的推移の可視化を主題にシークエンスで構成した第一写真集『KUMANO』を1998年に刊行。一貫して「見ること」への問題意識にもとづいた作品発表を重ねてきた。


 このセクションで鈴木は、石橋財団コレクションのモネ作品のなかから《睡蓮》(1903)と《睡蓮の池》(1907)を選んで展示している。水面の写真を撮りながら、写真には「水面に映り込むイメージ」「水面自体のイメージ」「水底のイメージ」の3層のレイヤーが存在することに気がついたという鈴木。光学機器を操りながら、光の探求を続けたモネの絵画の持つレイヤーと対峙したことが、その写真からはよくわかる。


 また、ギュスターヴ・クールベも鈴木がこのセクションで選んだ作家だ。クールベの《雪の中を駆ける鹿》(1856-57頃)や《石切場の雪景色》(1870頃)はいずれも雪景色を描いた作品だが、鈴木にとっても積雪した風景は重要なモチーフとなってきた。クールベの理想化の手つきと、鈴木の被写体のありのままに写そうとする手つき、異なるアプローチの双方が意外な符号を見せる様も、現地でぜひ体験してもらいたい。

 セクションⅢ「ポール・セザンヌ」は、展覧会名にも冠されているセザンヌについての、ふたりの写真家の思索をたどる。



 柴田にとって、インフラストラクチャーをモチーフとした最初の作品となった《神奈川県愛甲郡清川村宮ヶ瀬》(1983)。本作で撮影された橋のある風景は、柴田にとってセザンヌの風景を見るときと似た感覚を想起させるものだったという。以降の柴田がこうしたモチーフを撮り続けている所以を、セザンヌの絵画から探ってみる契機にもなりそうだ。


 いっぽうの鈴木は、セザンヌの絵画のモチーフとして誰もが思い浮かべる「サント=ヴィクトワール山」を幾度も撮っている。会場に並べられたセザンヌの《サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール》(1904-06頃)と、鈴木の《サンサシオン
09,C-58》(2009)は、この山を前にしたふたりの作家の目がいかなる道程をたどったのかについて、様々な示唆を与えてくれる。

 以上のセクションⅢを意識して、柴田はセクションⅣ「柴田敏雄──ディメンション、フォルムとイマジネーション」を構成した。


 フォルムが強調された作品や幾何学的なモチーフがセレクトされたこのセクションでは、円空の木彫による仏像が存在感を放つ。柴田の撮影したコンクリートのダムや法面と、円空が木を削ることで生まれた仏像。平面と立体の境目を超えて、それぞれのフォルムが交錯する様を楽しみたい。


 セクションⅤ「鈴木理策──絵画を生きたものにすること/交わらない視線」で注目したいのは、鈴木の連作「Mirror
Portrait」の展示だ。これは自身を見つめる人物をハーフミラー越しに撮影したポートレートシリーズであり、鏡に写って反転した状態のモデルたちがこちらを見つめている作品群だ。

 「Mirror
Portrait」シリーズが展示されたパネルの裏側にも鏡が設置されており、そこにはアルベルト・ジャコメッティの彫刻《ディエゴの胸像》(1954-55)が映り込む。鈴木のポートレートとジャコメッティの胸像は、パネルを隔ているために同時に見ることは叶わないが、鏡によって接続されたこれらは、自身の姿を見るという行為がいかなることなのかを改めて問う。



 最後のセッションⅥ「雪舟」は、ほかのセッションとは異なる階での展示となる。タイトル通り、雪舟《四季山水図》が中央に鎮座するこの部屋の両端で、柴田は90年代に制作したダムの写真3点を、鈴木は白銀の世界を写した「White」シリーズの2点を展示する。西洋における風景とは異なる、東洋の「山水」が提示する景色を、写真という近代の媒体と接続させる斬新な試みとなっている。


 石橋財団コレクションから選ばれた、名だたる芸術家による幅広い形態の作品に、カメラのレンズを通して世界をとらえてきたふたりの作家の手によって新たな光を当てる挑戦的な展示。眼の前の像がいかなるイメージをつくり出しているのか、ぜひ会場で感じてほしい。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/e5375bc4ab56df196387ea4e30a17cb7142a31b0

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