久しぶりに本が読みたくなる書評『大相撲と鉄道 きっぷも座席も行司が仕切る!?』(木村銀治郎著/イラスト:能町みね子/交通新聞社)

大阪は意外に大相撲と縁が深い。相撲部屋や力士たちのパトロンを「タニマチ」と呼ぶが、これは大阪市南区(現・中央区)谷町の医者が明治時代に力士たちの面倒を見たことが語源になっているというのが有力な説の一つらしい。大阪人も大相撲が大好きなのだ。
さて、土俵の上ばかりに目を奪われがちになるが、これだけの大イベントを2カ月に1回、15日に渡ってつつがなく成功させるのは、当然のように見えて実は並大抵のことではない。
そこで大相撲の側面を記した本を読んでみたいと思い色々探していると、『大相撲と鉄道 きっぷも座席も行司が仕切る!?』(木村銀治郎著・交通新聞社)という本を見つけ出した。切り口が面白い。
大相撲と鉄道――あまり関係なさそうだが、ちょっと考えてみると大いに関係があることが分かる。大阪・名古屋・九州で行われる地方場所では移動に鉄道が使われるし、地方巡業もまたしかりである。出版社が時刻表を発行している交通新聞社というのも面白い。
インターネットの路線検索サービスの普及で本の時刻表の需要は減っているだろうが(以前ならどこのオフィスにも必ず最新の時刻表があった)、鉄道マニア、鉄ちゃんには便利さよりも本の時刻表だろう……そう思いながら本の帯に目をやると、「鉄道 × 異業種 魅惑のコラボレーション!」『プロ野球と鉄道』『競馬と鉄道』『オリンピックと鉄道』といった既刊書のキャッチコピーとタイトルが飛び込んできた。
さらに本のそでを見ると、『相鉄はなぜかっこよくなったのか』というタイトルの新書も出ている。迷わずきっぱりと主観を前面に押し出しているのがいい。電車のデザインの賞を立て続けに取ったのか、あるいはそれが鉄ちゃんの共通認識なのか。とにかく、鉄道に対する自信と熱気を感じさせる出版社である。