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ガウディを知る6つのトリビア:サグラダ・ファミリア聖堂建設の裏側にある知られざるストーリー
2023-06-16
ガウディを知る6つのトリビア:サグラダ・ファミリア聖堂建設の裏側にある知られざるストーリー

建築家アントニ・ガウディ(1852~1926)の代表作であり“未完の聖堂”と呼ばれるバルセロナのサグラダ・ファミリア聖堂に焦点を絞り、その建築思想と造形原理に迫る展覧会「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が東京国立近代美術館で開催されている。会期は6月13日~9月10日(会期中一部展示替えあり)。また滋賀の佐川美術館(9月30日~12月3日)と名古屋市美術館(12月19日~2024年3月10日)にも巡回する。


――今回の展覧会は、サグラダ・ファミリア聖堂を中心に据えたものですね。2026年にはガウディ他界から100年となり、いよいよ完成の目処がついてきたとも言われています。途方もない時間や人手、お金等がかけられてきた一大プロジェクトですが、当初は貧しい人々のための聖堂として始まったそうですね。建築資金は貧困層の人々から小額献金をコツコツと集めていたとか。それがいったいなぜ、こんな大規模な建築へと発展したのでしょうか。

鈴木 バルセロナで宗教関連の出版と書店を経営していたジュゼップ・マリア・ブカベーリャという人が、「聖ヨセフ信心会」という民間団体を1866年に創設したことが始まりです。

産業革命当時、バルセロナはスペイン第一の都市で近代化が進みました。そこではガウディのパトロンになるような大富豪が誕生したいっぽうで、無数の貧しい人々をも生み出していった。そんな貧富の差が拡大する状況を前に、貧困層の人々が自分たちの救いを求められるような教会制度をつくろうではないか、と考えたのがブカベーリャです。聖ヨセフ信心会の本堂の建設を提案しましたが、当然資金集めは生優しいものではない。しかし彼は出版業に長けていて、機関誌『聖ヨセフ帰依の布教』を媒体としながら会員を集めたんです。中南米諸国やフィリピンなどスペイン語圏で機関誌が届くところなら誰でも会員になれて、その会員からの献金システムを作ったんです。サグラダ・ファミリア贖罪聖堂というのが正式名称なんですが、「贖罪」の意味するところは、貧しき人々がさらに犠牲を払って献金することで、自分の罪が洗われるということです。

こうして細々と始まった献金システムがまとまり、聖堂が建てられる可能性ができてきたところで、ブカベーリャはフランシスコ・デ・パウラ・ビリャールという建築家に依頼しサグラダ・ファミリア聖堂を作ろうとしました。初代建築家となるビリャールはガウディよりもひとつ上の世代で、ゴシック的な様式のもっと小さな教会を設計し、1882年に工事が始まりました。ところがまもなく方向性をめぐってブカベーリャと対立が起き、ビリャールは降りることになったんです。そこで白羽の矢がたったのがガウディでした。

1883年に当時31歳のガウディが引き継いだとき、もう工事は始まっているわけですから、「自分のアイデアで作り直せ」と言うこともできず、ビリャール案を少しずつ修正しながら徐々に自分のテイストを出していくわけですね。でも最初に予定されていたビリャール案は本当にいまのサグラダ・ファミリア聖堂からは想像がつかないコンパクトなものなので、これだったらとっくに完成していたと思います。

転機は1891年に巨額献金が入ってきたことです。このお金をどう使うか。貧しい人のための教会だったら、質素なかたちでなるべく早く完成させた方がいいという考え方もあるけれど、ここでガウディはある夢を描く。ガウディはこの恵みのような巨額の献金を使って、聖堂のスケールを拡大しようとしたんです。より壮大で崇高な、カタルーニャやバルセロナのシンボルとなる新たなヴィジョン。それが本当にガウディらしいと思います。そうすることでサグラダ・ファミリア聖堂は自分の死後も誰かが完成へと導くだろうという確信があったようにも思えます。いままでにないものをつくりたいという、建築家としての欲望も出てきたのかもしれないですね。

具体的には、彼は「降誕の正面」と呼ばれるファサードだけを、上へ上へと立ち上げていったわけです。もし建築をバランス良く作ろうと思ったら全体に手を入れていくはずですが、そうしなかった。なぜかというと、鐘塔の高さを上へと引き上げ、その上に鐘塔頂華(ちょうげ)というシンボルを作りたかった。これを見れば、街の人々にも建築の進展をわかりやすく示すことができるし、自分たちの街のモニュメントになるぞ、と認めてもらえるかもしれない。こうしたガウディの戦略が功を奏して、「降誕の正面」はサグラダ・ファミリア聖堂のヴィジュアルイメージとして評価を獲得しました。

その結果、建設はそこから百数十年続くことになったんです。ここ20~30年では、観光収入の増加や新しいコンピュータ技術の活用などによって、工期が短縮していますが、全体計画自体はガウディ時代にでき上がっていた。ガウディはおそらく、「自分はここを完成させる。あとは誰かが引き継いでくれるに違いない。だからこそ、贖罪聖堂としてより高い理念のもとに崇高なものを作ろう、建築的にもかつてのゴシック大聖堂を超えるようなものを作ろう」と考えたのではないでしょうか。

――ブカベーリャさんもよく許しましたよね。普通、建築家が全体を作ろうとしないで巨大かつ複雑・豪華なファサードだけをひたすら作っていたら「ちょっと、何してるの?」となる気がします。

鈴木 そうなんですよ。誰も止めなかったのか、止められなかったのかはわからない。ブカベーリャとガウディのやりとりに関する記録が残されているのか私は知りません。でもきっと、ブカベーリャもガウディの計画に乗ったんでしょうね。

ソース元URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/34dfae9d3a252bb319823cab25f5dc0bd4e91cc0

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