細江英公と三島由紀夫が炸裂する名作『薔薇刑』|小宮山書店選レア写真集 Vol.1

内容は、三島の裸體を中心とした耽美な写真が並ぶ「序曲」「市民的日常生活」「哂う時計あるいは怠慢な証人」「さまざまな涜聖」「薔薇刑」の5章で構成。当時はリアリズム写真全盛時であって、合成技術を多用しシュールな世界観を表現した作品はとても新鮮であり人々を魅了したであろうと想像します。
被写体は、三島由紀夫のほかにも土方巽や江波杏子、元藤燁子が参加。撮影時には細江先生の助手として森山大道が帯同し「三島さんの体にホースをグルグル巻きつけていた」といいます(森山氏談)。『薔薇刑』はこんな豪華メンバーが揃って作り上げた傑作。グラビア印刷による深い黒の描写もこの写真集の味わいを深くしています。
余談ですが、元版の出版当時、販売促進用に『薔薇刑』の内容見本が制作されており、そこでは澁澤龍彦や岡本太郎、安部公房などそうそうたるメンバーが寄稿しています。そして何故か小宮山書店、小宮山慶一の名前も!私の祖父である慶一は、「この写真集ですが、、、間違いなく古本になっても高値を呼びましょう。」と書いているのです。
細江先生から直接当時の話を聞いた際、「発売したばかりなのに将来高値になるなどといわれ、若かった私は怒ってしまいましたが、いまになって小宮山(慶一)さんのおっしゃっていたことが正しかったと理解しました。あの時は本当に失礼しました」と丁寧なお言葉をいただきました。そんな流れもあり『二一世紀版・薔薇刑』では細江先生から推薦され、私が推薦文を書かせていただいたという、何かと縁を感じる1冊です。
ヴィンテージとしての注意点は外函のコンディションはもちろん、巻頭にある白半透明のパラフィン紙4ページにシミやヨレが出やすいこと。購入の際にはチェックしてください。
第二作となる新輯版は、1970年に自決した三島の死後に出版されたもの。前作より巨大化して重量たっぷり、筒型のダンボール函から本体を引き抜くと白布のケースがあらわれます。蓋を開くと横尾忠則のインド調のイラストと赤い薔薇に彩られた裸體の三島が登場。本編中にも横尾の挿画があり、なんともエネルギッシュな演出で元版の杉浦康平とは違ったアプローチで『薔薇刑』を昇華させているのです。サイズアップしたことにより写真も大迫力!
題字は漢字ですが横書き。「これには訳があって最初は縦書きでの予定だったが、海外からも注目されていたため横書きの案になりました」とのこと(細江先生談)。実はこの題字のほか、三島由紀夫自筆色紙原稿は縦書き、横書き、英語ver.などが編集段階で用意されており、迷ってから漢字の横書きになった経緯と三島が生前から『新輯版 薔薇刑』に携わっていたことがわかります。
ヴィンテージとしての注意点は、糊のせいか白布ケースに茶色いシミが出やすいこと。購入の際にはチェックしてみてください。
どちらも時代を作ってきた秀逸な写真集です。機会がありましたら是非実物を見ていただきたいと思います。