世界遺産ストーンヘンジ、誰もが知っている遺跡の「当たり前でない姿」を撮影するには

考古学の象徴的な遺跡であるストーンヘンジは、ロンドンから南西に約150キロ離れたソールズベリー平原に、4500年以上前から立っている。その起源は諸説あるものの、いまだはっきりしたことはわかっていない。昔から多くの観光客を魅了し、毎年夏至には日の出、冬至には日の入りの時刻に数千人がこの場所を訪れる。
世界的に有名なストーンヘンジは、とりわけ英国人にとって特別な存在だ。イングランドで育ったウー氏のように、子どもの頃に学校の遠足で訪れたという人も多い。
「もちろん、大人になってからも訪れることはできますが、成長するにつれてそれは違った意味を持つようになります。あまりにもたくさんのストーンヘンジの写真を見ているので、それが当たり前のような存在になってしまうのです」
ウー氏は今回のプロジェクトに関して、ストーンヘンジの普遍性をとらえることで、当たり前になった遺跡の、当たり前ではない姿を見せる機会を提供していると話す。
撮影に当たっては、特にドローンの使用をめぐり、他の現場では経験したことのない問題に直面した。ストーンヘンジでドローンを飛ばすには、複雑な手続きを経て許可を得る必要がある。また、多くの人に良く知られている遺跡に対し、いかに新しい見せ方ができるかという難題に取り組まなければならなかった。加えて、英国の予測不可能な天候、英国のドローン試験。さらに、ドローンを飛ばすたびにストーンヘンジの管理団体「イングリッシュ・ヘリテージ」と英空軍に連絡を入れ、許可を取り付ける必要もあった。
遺跡の真上にドローンを飛ばすことはできなかったため、長さ15メートルの伸縮可能な棒の先にブルートゥースで操作できるLEDライトを取り付け、助手がそれを持って石の上から光を当てた。ドローンの照明が月明かりに影響を受けることのないように、撮影は晴れた日の夜、月の周期に合わせて行った。
ウー氏の写真の背景には、物や場所に対する人々の見方を変え、作品を通して新たな認識を引き出すという意図がある。
「私の作品の多くは、見慣れたものを見慣れない光の中で見せる、という考えに基づいています」
自然の環境の中で人工的な光を使うのもそのためだ。「人工の光があるとは期待していない場所でそれを使うことによって、驚きの風景が現れます。いつも見慣れている風景が、全く違う光の中で見えてくるのです」